単巻変圧器について、参考書などでは効率が良くなるとかいてあります。
変圧器の巻線を共通で使っているため、効率が良いというのはなんとなくわかります。
今回は、単巻変圧器にした方が効率がよくなることを理論的に証明してみました。
それでは、いってみましょう。
考え方
2巻線変圧器の効率を求める
単巻変圧器の効率を求める
両者の効率を比較する
このような流れで考えていきます。
2巻線変圧器の効率を求める
図のような2巻線変圧器があります。

Wn[VA]:定格容量,V1,V2[V]:1次側,2次側電圧,Ploss[W]:2巻線変圧器の全損失
簡単のため、定格負荷、力率100%のときの効率η1は
η1=出力/入力=出力/(出力+損失)=Wn/(Wn+Ploss)・・・①
単巻変圧器の効率を求める
2巻線変圧器を図のように接続して単巻変圧器としました。

I0[A]:1次側に流れる電流,I1[A]:分路巻線に流れる電流,I2[A]:直列巻線に流れる電流,Vh[V]:2次側電圧,Ps[Va]:単巻変圧器の自己容量
I0を求める
回路図より
I0=I1+I2・・・②
となります。
Vhを求める
Vh=V1+V2・・・③
となります。
自己容量と負荷容量を求める
自己容量Ps[VA]は定格容量Wn[VA]と等しくなります。
よって、
Ps=Wn=V1*I1=V2*I2=(Vh-V1)*I2・・・④
負荷容量Pl[VA]は
Pl=Vh*I2=(V1+V2)*I2=(V1+V2)*(I0-I1)=V1I0+V2I0-V1I1-V2I1
=V1I0-V1I1+V2(I0-I1)
②式のI2=I0-I1より
Pl=V1I0-V1I1+V2I2
④式よりV1I1=V2I2なので
Pl=Vh*I2=V1I0・・・⑤となることがわかりました。
自己容量と負荷容量の関係
④、⑤式を用いると
⑤/④=Pl/Ps=Pl/Wn=VhI2/(V2I2)=Vh/(Vh-V1)=1/(1-V1/Vh)・・・⑥
となります。
単巻変圧器の効率は?
今回も簡単のため、定格負荷、力率100%にします。単巻変圧器の効率η2は、⑥式を使って
η2=Pl/(Pl+Ploss)=(1/(1-V1/Vh))Wn / ((1/(1-V1/Vh))Wn+ploss)
=Wn/[Wn+(1-V1/Vh)Ploss]・・・⑦
両者の効率を比較する
①式より2巻線変圧器の効率η1は
η1=Wn/(Wn+1Ploss)
⑦式より単巻変圧器の効率η2は
=Wn/[Wn+(1-V1/Vh)Ploss]
これらの式からPlossの赤字で示した係数部分、1と(1-V1/Vh)の大小関係がわかれば、どちらの方が効率がよくなるのかわかります。
(1-V1/Vh)について、
1-V1/Vh=1-V1/(V1+V2)
0<V1/(V1+V2)<1より
1-V1/Vh<1となることがわかります。
これより
Ploss>(1-V1/Vh)Plossとなることがわかります。
以上より、2巻線変圧器より単巻変圧器のほうが効率が高くなります。
本日はここまでです、毎度ありがとうございます。