直流電圧(DC)を交流電圧(AC)に変換する方法についていくつか紹介しております。
前回は単相電圧形フルブリッジインバータの電圧波形について記事にしました。
そのときの記事はこちらからどうぞ。

今回も単相電圧形フルブリッジインバータになるのですが、、位相をシフトさせます。
位相をシフトさせることで、電圧の実効値を変化させることができ、波形も正弦波に近づきます。
今回はどのように位相をシフトさせているのか?それによりどの素子が導通するのかみていきます。
それでは、いってみましょう。
前回の記事のおさらい
“位相シフトあり”の説明をするためにどうしても”位相シフトなし”ときの状況(前回の記事)を押さえておく必要があります。
はじめに単相電圧形フルブリッジインバータ回路図になります。前回の記事と同じ図です。

Q1,Q2,Q3,Q4:IGBT素子,D1,D2,D3,D4:ダイオード,vd[V]:出力電圧,Ed[V]:電源電圧
出力電圧は矢印の向きをプラスとします。
次に”位相シフトなし”の出力電圧の波形と素子の導通状態はこのようになりました。

“位相シフトなし”単相電圧形フルブリッジインバータの特徴はQ1とQ4,Q2とQ3のon/offが同じであるということです。
これを図を使って示すとこんな感じになります。

“位相シフトあり”の説明をするために、
Q1,Q2をアーム1
Q3,Q4をアーム2
と呼ぶことにします。
どのように位相シフトさせているのか?
位相シフト量がα=2π/3[rad](120度)の場合、どのように変化するのかを説明します。
アーム2のon/off信号をアーム1のそれに対して位相を(π-α)=π/3[rad](60度)遅らせます。
図にするとこのようになります。

今回素子の導通状態を確認するために、一つ抑えておかなければならないことがあります。それは、
コイルに流れる電流は急激には変化しない
ということです。これを抑えておかないと出力電圧の波形が若干変わってしまいます。
それでは120度の位相シフトをしたら素子の導通状態および出力電圧はどのようになるのかみていきましょう
位相シフトによる素子の導通状態及び出力電圧の確認
Q1,Q4:onのとき
赤枠部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

Q1,Q4:onにより、回路のパスはこのようになります。

出力電圧はEdとなります。コイルには図のようにエネルギーがたまります。
Q4:offのとき
赤枠部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

Q4をoffしても負荷のコイルにエネルギーがたまっているため、Q1,Q4:on時と同じ方向に電流が流れ続けます。
この向きに電流を流すためにはD3を通る必要があります。
そのため回路のパスはこのようになります。

出力電圧は0[V]となります。
Q1,Q3:onのとき
赤枠部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

Q3:onでも電流の流れる向きはQ1:on,Q4:offの時と同様です。

負荷のコイルの電流は急激には変化しないため、Q1,Q4:on時と同じ方向に電流が流れ続けます。
出力電圧は0[V]になります。
Q1:off,Q3:onのとき
赤枠部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

負荷のコイルの電流は急激には変化しないため、Q1,Q4:on時と同じ方向に電流が流れ続けます。
そのためにはD2,D3を電流が通る必要があります。
回路のパスはこのようになります。

図より出力電圧は-Ed[V]になります。
Q2,Q3:onのとき
赤枠部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

Q2,Q3:onにより、電流の向きが反対になります。回路のパスはこのようになります。

出力電圧は-Edとなります。コイルには図のようにエネルギーがたまります。
Q2:on,Q3:offのとき
赤枠部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

Q3をoffしても負荷のコイルにエネルギーがたまっているため、Q2,Q3:on時と同じ方向に電流が流れ続けます。
この向きに電流を流すためにはD4を通る必要があります。
そのため回路のパスはこのようになります。

出力電圧は0となります。
Q2,Q4:onのとき
赤枠部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

Q4:onでも電流の流れる向きはQ2:on,Q3:offの時と同様です。

負荷のコイルの電流は急激には変化しないため、Q2,Q3:on時と同じ方向に電流が流れ続けます。
出力電圧は0[V]になります。
Q2:off,Q4:onのとき
この部分のときの素子の導通状況と出力電圧を確認します。

負荷のコイルの電流は急激には変化しないため、Q2,Q3:on時と同じ方向に電流が流れ続けます。
そのためにはD1,D4を電流が通る必要があります。
回路のパスはこのようになります。

図より出力電圧はEd[V]になります。
位相シフトによる出力電圧の波形
これらの結果をまとめると位相シフト量が2π/3[rad]のときの出力電圧の波形はこのようになります。

位相シフトなしのときの出力電圧の波形をもう一度示します。

位相シフトありのときのポイントは図からわかるように
出力電圧の波形が正弦波に近くなる
位相シフト量αを調整することで出力電圧の実効値も変化させることができる
本日はここまでです、毎度ありがとうございます。