機械

スコット結線変圧器の効率92.8%を求めてみました(機械)

face=”180度前後開脚.jpg” name=”ノリユキ” align=”left” border=”blue” bg=”blue”]いらっしゃーい。第3種電気主任技術者(機械)のなぜなぜシリーズはじめまーす。[/chat]

今回のテーマは電験3種というよりは2種向きの内容になります。

スコット結線変圧器の効率が92.8%という数値は知っていても、どのような過程でこの数値になったのか知らない方は多いのではないでしょうか?

今回はその導出過程を記事にしました。

それでは、いってみましょう。

スコット結線変圧器とは

このような結線を施した巻線をスコット結線変圧器と言います。

上の部分の単相変圧器をT座変圧器、下の部分の単相変圧器をM座変圧器と呼びます。

IU,IV,IW[A]:三相電源から流れる電流、V1t[V]:T座変圧器の1次側にかかる電圧、V1m[V]:M座変圧器の1次側にかかる電圧、at,am:T,M座変圧器の巻数比、V2u,V2v[V]:2次側にかかる電圧、Iu,Iv[A]:2次側に流れる電流

スコット結線変圧器を使うことで、3相交流を2相交流に変換することができます。

今回は説明を容易にするために2次側の負荷は平衡抵抗負荷であることにしています。

そのため、大きさはV2u=V2v,Iu=Ivとなります。

またV2=V2u=V2v・・・①,I2=Iu=Iv・・・②とすることにします。

求め方

効率が92.8%であることを証明するために以下の手順を追って説明していきますが、その前にやるべきことがあります。

それは電圧、電流のベクトル図をかくことです。

これをかくことが問題を解くための大きな一歩となります。

まずは電圧のベクトル図を下に書きました。(電流のベクトル図は後で書きます)

VU,VV,VW:[V]:U,V,W相の電源電圧(相電圧),VUV,VVW,VWU[V]:線間電圧

図から明らかなように、V1m=VVWとなります。V1m=V1・・・③とします。

それではV1tを求めます。上の回路図の1次側を抜粋しました。

VVW=V1t+(-VUV/2)となることがわかります

これをベクトル図にしてかいてみるとV1tはこのようになります。

V1tはV1m(VVW)より位相がπ/2進んでいることがわかります。

V1tの大きさはを求めていきます。

30度,60度,90度の直角3角形になることから

V1t= VUV*√3/2=V1m*√3/2=(√3/2)*V1となります。

V1(=VUV=VVW=VWU):1次側の電源電圧の大きさ

これらを使って最初に巻数比から求めていきます。

巻数比(am,at)を求める

1次側の電圧ベクトル図がかけたので、2次側のベクトル図をかきました。

それでは、M座変圧器の巻数比amを求めます。

V1m:V2u=am:1なので、

am=V1m/V2u=V1/V2となります。(①、③式より)

T座変圧器の巻数比atを求めます。

V1t:V2v=at:1なので、

at=V1t/V2v=(√3/2)*(V1/V2)=(√3/2)*am

となります。

一次電流(IU,IV)を求める

負荷を抵抗負荷としているので2次側の電流のベクトルの向きは2次側電圧の向きと同じになります。

これを元に一時側の巻線に流れる電流をベクトル図に記載します。

IVO[A]:2次巻線の起磁力により発生する一次巻線に流れる電流

変圧比を使って電流を求めます。

T座変圧器について、

IU:Iu=1:atなので

IU=(1/at)*Iu=(2/√3)*(I2/am)となります。(②式より)

m座変圧器について、

IVO:Iv=1:amなので

IVO=(1/am)*Iv=(1/am)*I2となります。

M座変圧器についてもう少し詳細をみていきます。図を見てください。

U相から流れてきた電流はV,W相に半分に分流されます。

3相電源から流れる電流IVはIVOと-IU/2の電流の和になります。

ベクトル図に示すとこのようになります。

ベクトル図よりIVの大きさは

IV=√(IVO^2+(-IU/2)^2)=(I2/am)*√(1+1/3)=(I2/am)*(2/√3)=IU

となります。IWについても同様に求めることができます。

つまり2次側の負荷が平衡していれば、3相交流側の電流も平衡になります。

m座の変圧器容量Pm、t座の変圧器容量Ptを求める

ここまできたらゴールまでもうすぐです!

Pm,Pt[VA]をそれぞれ求めていきます。

Pt=V1t*IU=(√3/2)*V1*(2/√3)*(I2/am)=(V1/am)*I2=V2*I2

Pm=V1m*IV=V1*(2/√3)*(I2/am)=(2/√3)*(V1/am)*I2=(2/√3)*V2*I2

となります。

2次側の合計皮相電力P[VA]は、

P=2*V2*I2

となります。

効率ηを求める

効率η[%]は

η=(2次側の合計皮相電力)/(合計変圧器容量)*100として求めることができます。

η=P/(Pm+Ps)*100=2*V2*I2/((2/√3+1)*(V2*I2))*100

=2/(2/√3+1)*100=92.8[%]

求めることができました。

本日はここまでです、毎度ありがとうございます。