電力

電線のたるみ(D=WS^2/8T)と長さ(L=S+8D^2/3S)の公式を証明(導出)してみました(電力)

ノリユキ
ノリユキ
いらっしゃーい。第3種電気主任技術者(電力)のなぜなぜシリーズはじめまーす

皆様、なぜなぜシリーズではお久しぶりです。

今回は電線のたるみ、長さの公式を求めます。こんな公式でした。

$$ たるみ=D=\frac{WS^2}{8T}$$

$$ 線の長さ=l=S+\frac{8D^2}{3S} $$

(たるみは以前導出していますが、今回はそれ以上にしっかり証明させていただきます)

公式を証明する前に、証明するための武器を示します。

*微分(まあまあ高度です。。)

*積分(結構高度です。。。)

*マクローリン展開(大学の数学でやったような。。。。)

証明するためには2種、3種の範囲を超える知識を使います。

よって、興味のある方のみ見てください。

他のサイトで電線のたるみ、長さを求めているものもあるのですが、若干導出方法が違っているので記事にすることにしました。

それでは、いってみましょう。

たるみ、線の長さの証明

電線を図示してみました。電線を赤線で示しました。

D[m]:たるみ,S[m]:径間の長さ,T[N]:電線の水平張力,W[N/m]:単位長さ当たりの荷重,l[m]=線の長さ

それでは、電線のたるみ、長さを求めていきます。

1,ある点の電線の傾きを求める

力の関係を図で示すとこんな感じになります。

θ[rad]:なす角,T0:電線の張力

図より傾き(dy/dx)は

$$ \frac{dy}{dx}=tanθ=\frac{sinθ}{cosθ}=\frac{Wl}{T}・・・① $$

①をxで微分すると

$$ \frac{d^2y}{dx^2}=\frac{W}{T}\frac{dl}{dx}・・・② $$

2,dlとdx,dyの関係

電線の微小部分を図示するとこんな感じです。

3平方の定理より

$$ dl=\sqrt{dx^2+dy^2}=dx\sqrt{1+(dy/dx)^2} $$

$$ \frac{dl}{dx}=\sqrt{1+(dy/dx)^2}・・・③ $$

②に③を代入すると

$$ \frac{d^2y}{dx^2}=\frac{W}{T}\sqrt{1+(dy/dx)^2} $$

p=dy/dxとおくと

$$ \frac{dp}{dx}=\frac{W}{T}\sqrt{1+p^2} $$

$$ \frac{dp}{\sqrt{1+p^2}}=\frac{W}{T}dx $$

両辺を積分すると

$$ \int_{}^{}\frac{dp}{\sqrt{1+p^2}}= \frac{W}{T}x+C・・・④ $$

C:積分定数

ここで

$$ t=p+\sqrt{1+p^2}$$

とおいて、この式の両辺をpで微分すると

$$ \frac{dt}{dp}=1+\frac{1}{2}\frac{2p}{\sqrt{1+p^2}}=1+\frac{p}{\sqrt{1+p^2}} $$

$$ =\frac{p+\sqrt{1+p^2}}{\sqrt{1+p^2}}=\frac{t}{\sqrt{1+p^2}} $$

この式を整えると

$$ \frac{dp}{\sqrt{1+p^2}}=\frac{dt}{t}・・・⑤ $$

④に⑤を代入すると

$$ \int_{}^{}\frac{dp}{\sqrt{1+p^2}}= \int_{}^{}\frac{dt}{t}=lnt $$

$$ =ln(p+\sqrt{1+p^2})=\frac{W}{T}x+C $$

この式のCを求めます。x=0,y=0⇒dy/dx=p=0より

$$ \frac{W}{T}0+C=ln(0+\sqrt{1+0^2})=ln1=0 $$

C=0、よって

$$ \frac{W}{T}x=ln(p+\sqrt{1+p^2})$$

この式の対数表示を指数表示にかえると

$$ e^{\frac{W}{T}x}=p+\sqrt{1+p^2}・・・⑥$$

⑥の両辺逆数をとると

$$ e^{-\frac{W}{T}x}=\frac{1}{p+\sqrt{1+p^2}} $$

$$ =\frac{\sqrt{1+p^2}-p}{(\sqrt{1+p^2}+p)(\sqrt{1+p^2}-p)}=\sqrt{1+p^2}-p・・・⑦$$

⑥-⑦をすると

$$ e^{\frac{W}{T}x}-e^{-\frac{W}{T}x}=2p $$

$$ p=\frac{dy}{dx}=\frac{e^{\frac{W}{T}x}-e^{-\frac{W}{T}x} }{2}・・・⑧$$

⑧の両辺をxで積分すると

$$ y=\frac{T}{W}\frac{e^{\frac{W}{T}x}+e^{-\frac{W}{T}x} }{2}+B $$

B:積分定数

Bを求めます。x=0⇒y=0より

$$ 0=\frac{T}{W}\frac{e^{\frac{W}{T}0}+e^{-\frac{W}{T}0} }{2}+B=\frac{T}{W}+B $$

$$ B=-\frac{T}{W} $$

よって、

$$ y=\frac{T}{W}\frac{e^{\frac{W}{T}x}+e^{-\frac{W}{T}x} }{2}-\frac{T}{W} ・・・⑨$$

ノリユキ
ノリユキ
yをxの関数として表すことができました!

たるみDを求めるために

ここまできたらゴールは目の前です!

$$ D=\frac{WS^2}{8T}$$

を求めるためにマクローリン展開を使います、このようなものです。

$$ e^{\frac{x}{a}}≒1+\frac{x}{a}+\frac{x^2}{2a^2}+\frac{x^3}{6a^3} $$

$$ e^{-\frac{x}{a}}≒1-\frac{x}{a}+\frac{x^2}{2a^2}-\frac{x^3}{6a^3} $$

これらの式に1/a=W/Tを代入すると

$$ e^{\frac{W}{T}x}≒1+\frac{W}{T}x+\frac{1}{2}(\frac{W}{T})^{2}x^2+\frac{1}{6}(\frac{W}{T})^{3}x^3 $$

$$ e^{-\frac{W}{T}x}≒1-\frac{W}{T}x+\frac{1}{2}(\frac{W}{T})^{2}x^2-\frac{1}{6}(\frac{W}{T})^{3}x^3 $$

これらを⑨式に代入すると

$$ y=\frac{T}{W}\frac{2+(\frac{W}{T})^{2}x^2}{2}-\frac{T}{W}=\frac{1}{2}\frac{W}{T}x^2 $$

これにy=D,x=S/2を代入すると、、、

$$ D=\frac{1}{2}\frac{W}{T}(\frac{S}{2})^2=\frac{WS^2}{8T} $$

ノリユキ
ノリユキ
たるみの公式を導出することができました!

線の長さlを求めるために

いよいよ線の長さの公式を求めます。

⑧に話を戻します。

$$ p=\frac{dy}{dx}=\frac{e^{\frac{W}{T}x}-e^{-\frac{W}{T}x} }{2}・・・⑧$$

①式を思い出しましょう。

$$ \frac{dy}{dx}=\frac{Wl}{T}・・・① $$

⑧に①を代入します。

$$ l=\frac{T}{W}\frac{e^{\frac{W}{T}x}-e^{-\frac{W}{T}x} }{2}・・・⑩$$

ノリユキ
ノリユキ
lもxの関数として表すことができました!

公式を求めるためにここでもマクローリン展開を使います。上にあったものを下にもってきました。

$$ e^{\frac{x}{a}}≒1+\frac{x}{a}+\frac{x^2}{2a^2}+\frac{x^3}{6a^3} $$

$$ e^{-\frac{x}{a}}≒1-\frac{x}{a}+\frac{x^2}{2a^2}-\frac{x^3}{6a^3} $$

これらの式に1/a=W/Tを代入すると

$$ e^{\frac{W}{T}x}≒1+\frac{W}{T}x+\frac{1}{2}(\frac{W}{T})^{2}x^2+\frac{1}{6}(\frac{W}{T})^{3}x^3 $$

$$ e^{-\frac{W}{T}x}≒1-\frac{W}{T}x+\frac{1}{2}(\frac{W}{T})^{2}x^2-\frac{1}{6}(\frac{W}{T})^{3}x^3 $$

これらを⑩に代入すると

$$ l=\frac{T}{W}\frac{2\frac{W}{T}x+\frac{1}{3}(\frac{W}{T})^3x^3}{2}=x+\frac{1}{6}(\frac{W}{T})^2x^3 $$

この式にx=S/2を代入すると

$$ l=\frac{S}{2}+\frac{1}{6}(\frac{W}{T})^2\frac{S^3}{8}・・・⑪ $$

⑪からWとTを消すためにたるみの公式を使います。以下のように式変形します。

$$ D=\frac{WS^2}{8T}⇒D^2=\frac{W^2S^4}{64T^2}$$

これを⑪に代入すると、

$$ l=\frac{S}{2}+\frac{8}{6}\frac{D^2}{S}・・・⑫ $$

おしいです!この長さは図の赤の実践部分になります。赤色の破線部分を含めた全長を求めるためには⑫を2でかける必要があります

⑫*2をすると線の長さは、、、

$$ l=S+\frac{8D^2}{3S} $$

ノリユキ
ノリユキ
ついに線の長さを求めることができました!

これで証明はおわりです。いかがでしたか!?

これを自力で証明できたら大したものです!

私は文献をあさってようやく導出できました。。

いつになるかわかりませんが、またなぜなぜシリーズでお会いしましょう!

本日はここまでです、毎度ありがとうございます。